木という生物は、生きている組織と、死んだ組織を共存させながら、存在しているそうです。死んだ組織は、堅い構造と化して、幹を支えています。自分の中の死んだ部分を、しっかりと活用しているのです。
この生と死の混在の仕方には、いろいろなヒントが隠されています。人生のヒントもあります。人間は生きているうちから、実は死んでもいるのです。生と死が混在しているのが人間です。人間も木も、少しずつ死んでいくのです。少しずつ死に慣れながら、ゆっくりと死んでいく。そう考えると、死ぬことはそれほど怖くはないかもしれない。生きているうちに、死と仲良くしていれば、生から死へとスムーズに移行できるのではないか。木はそんな生き方を教えて、ぼくらを勇気づけてくれます。